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予防ってだいじ?
山梨大学医学部附属病院 新生児集中治療部 臨床助教 笠井 慎
みなさん、こんにちは。私は山梨大学医学部附属病院小児科の笠井と申します。病院ではおもに、血液の病気を持つ子どもたちや、当院や県内で出生し、当院のNICU(新生児集中治療管理室)に入院した赤ちゃんの診療に当たっています。ここ数年はコロナウイルス感染症の影響で世界中がばたばたしていましたが、ようやく今年の5月から日本では「5類感染症」に移行しました。もうご存じの方も多いと思いますが、広報誌をお読みの方たちに関わる変更点としては、これまでは限られた医療機関で診療を受け、入院や外出自粛が行政から求められていましたが、これからは基本的にどこの医療機関でも診療が受けられ、政府からの外出自粛要請はなくなりました(学校の出席停止期間は引き続き、「発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで」です)。また、ワクチン接種は今のところ引き続き自己負担なく接種できますが、診療にかかる医療費負担は自己負担に変更となりました。
小児に関して振り返ってみますと、2歳以上の就学前児にマスク着用が推奨されたときには、「そんな小さな子たちがちゃんとマスクなんか着けていられるわけがない」と思っていましたが、予想に反してみんなちゃんとマスクと手洗い・うがいができる。今では私のマスクが少しずれていると、「マスクちゃんとして」と注意されるほどです。マスクと手洗い・うがいの効果は絶大で、コロナウイルス感染以外の飛沫・接触感染症は減少し(日本感染症学会HPから引用)、実際に気管支炎や肺炎などで入院する子たちがとても減った印象があります。また、コロナウイルスワクチンも現在は生後6か月以上から接種可能となりましたが、先日、「一緒に住んでいるおじいちゃんやおばあちゃんに移さないために打ちに来ました!」と言って受診したお子さんがいて、最近涙腺の弱い私は目頭を熱くしながら接種しました。ワクチンは接種した個人を守るだけでなく、周囲の人に移さない集団免疫(集団のなかに感染者がいても流行を阻止することができる)の効果も得られます。
話が長くなりましたが、5類感染症に移行し、過度の予防対策はもちろん必要ありませんが、マスクや手洗い・うがい、(コロナウイルス以外の感染症を含む)予防接種が感染症全般の流行を防ぐことは確かです(厚生労働省HP「予防接種情報」から引用)。せっかく覚えた予防習慣は、やめずに続けることができたらいいですね。以上が私からのよーぼう(要望)です。