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健康診断で尿潜血・尿蛋白を指摘されました。受診した方が良いでしょうか
山梨大学医学部附属病院 腎臓内科 助教 高橋 和也
IgA腎症という病気をご存じでしょうか。血尿と蛋白尿が続き、徐々に腎臓の働きが低下してしまう慢性の腎疾患です。発症しても何年かは自覚症状がなく、健康診断やかかりつけ病院の尿検査で、おしっこに血液や蛋白が検出されることで発見されることがほとんどです。風邪をきっかけに悪化することもあり、数日後に赤いおしっこが出て驚いて受診されることもあります。
腎臓は血液中の老廃物や塩分水分を「糸球体」と呼ばれる血管の塊でろ過し、不要なものを尿として体の外に排出する働きがあります。この糸球体に「IgA」という免疫の蛋白が沈着し、持続的または間欠的に炎症が起こる病気がIgA腎症です。IgA腎症は小児から高齢者まで幅広い年齢で発症する病気であり、学校検尿を行う目的の一つも、このIgA腎症を早期に発見するためです。診断には腎臓の組織を一部採取し顕微鏡で調べる検査(腎生検)が必要です。
無症状の時期にも腎臓は少しずつ傷んでいき、腎臓の働きが低下すると高血圧や腎不全に伴う症状が出てきます。病気が進行して腎臓の働きがほとんど廃絶してしまうと、透析や腎移植が必要となってしまいます。透析の原因となる疾患として、糖尿病、高血圧といった生活習慣病がよく知られていますが、IgA腎症を筆頭とした慢性糸球体腎炎は透析の原因の20%近くを占める3番目に多い原因なのです。
この病気の原因はまだ不明な点が多く、有効な予防方法はありません。早期発見、早期治療がとても重要です。尿潜血だけが陽性の場合、泌尿器科疾患や問題のない血尿であることが少なくありませんが、軽微であっても尿蛋白も陽性の場合はIgA腎症を発症している可能性があります。治療法は扁桃腺の摘出手術とステロイドの点滴・内服を合わせた治療、腎機能に応じた食事療法や血圧の治療を行います。これらの治療は、始める時期が発症してから早いほど高い治療効果が期待できます。
山梨県は全国に先駆けて、腎臓病の早期発見・治療のために地域の医療機関と腎臓専門医が協力し合う病診連携に取り組んできました。健康診断で尿潜血や尿蛋白を指摘されたときには、症状がなくても早めにお近くの医療機関を受診することをおすすめします。