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肺がん検診のおはなし
山梨大学医学部附属病院 呼吸器内科 講師 池村 辰之介
皆さんは最近、検診を受けてらっしゃいますか。また、受診されている方は要精密検査を放ったままにしてはいませんか。
日本肺癌学会によると、2020年1~10月に肺がんと診断された人は、2019年の同期間と比べて6.6%減少していたそうです。日本で1年間に肺がんと診断される方は約13万人ですので、約8600人減ったことになります。しかし、肺がんにかかる方が急に減ることはありません。これはつまり、受診・検診控えなどにより、肺がんと診断できるはずなのに診断されていない方が増えたということです。小さくはない数字ではないでしょうか。
肺がん検診では、1万人にレントゲン検査を行った場合、200人(2%)に異常が見つかり、精密検査で約5人(0.05%)の方が肺がんと診断されるといわれています。レントゲン検査は「肺がんである」と診断する検査ではなく、肺がんの可能性がある方を1万分の5から200分の5に絞り込むための検査です。要精密検査の方の97.5%は肺がんではありません。精密検査をすると異常なし(骨や血管の影、個人差)や、治療の必要ない異常(過去の肺炎・胸膜炎の痕)の場合も多いです。もし肺がんであったとしても、検診で見つかる場合には、根治ができる早期肺がんであることも多いです。
「要精密検査」になると誰もがとても不安になると思います。良くないのは、検診で異常を指摘された(病気の可能性があると絞り込まれた)のに精密検査を遅らせてしまうことと、受診しないことです。これはすべての検診や健康診断に当てはまります。非常に危険かつ残念と感じます。しっかりと精密検査を受けるようにしましょう。
当院では、要精密検査で受診された方には問診や診察に加えて、まずはレントゲン検査(再撮影)、CT(コンピューター断層撮影)、血液検査などを行うことが多いです。症状のない方がいきなり手術したり、入院したりといったことはほぼありません。まずは怖がらず、お手数ですが予約をとっていただければと思います。
たばこを吸っている方や吸われていた方は肺がんや肺気腫などの病気にかかりやすいため、呼吸器内科医としては特に毎年の検診をおすすめします。しかしながら、たばこを吸っている方への一番のおすすめは、間違いなく禁煙です。病気を早く見つけることよりも、病気にならないようにする禁煙が断然おすすめです。
最後になりますが、今年も皆さまのご健康をお祈りしております。