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下垂体腺腫について
山梨大学医学部附属病院脳神経外科 講師 荻原雅和
下垂体腺腫は、体のホルモン調節を行う中枢である脳下垂体に発生する良性腫瘍で、脳腫瘍の中で3番目に多い腫瘍です。年間に人口10万人あたり2~3例発症しますので、山梨県の人口が約80万人ですから、年間16~24人発症します。この腫瘍は、ホルモンを過剰に出す機能性腺腫とホルモン調節に関係ない非機能性腺腫の2種類に分類されます。
症状は、機能性腺腫では過剰に分泌されるホルモンによって変わり、多彩です。中でも多いものは、乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)を過剰に分泌するプロラクチン産生腺腫と成長ホルモンを過剰に分泌する成長ホルモン産生腺腫です。プロラクチン産生腺腫は女性に多く、生理不順と乳汁分泌を生じ、不妊治療中に見つかることが多いです。この腫瘍のみ、パーキンソン病の治療薬であるドーパミン作動薬(カベルゴリン)がよく効きます。薬が効かない場合は、後述の手術が必要となります。
成長ホルモン産生腺腫は、巨人症や先端巨大症(アクロメガリー)と言われ、小児期に発症すると高身長となり、成人で発症すると手足が肥大し、特徴的な顔つきになります。この腫瘍は、見た目の変化も問題になりますが、糖尿病や高血圧、直腸がんなどを合併し、寿命を短くしてしまうため、早期の治療が必要です。治療は手術が基本となりますが、術後に成長ホルモンの値が下がらない場合は、注射薬や内服薬の治療も必要となります。その他の機能性腺腫には副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫(クッシング病)や甲状腺刺激ホルモン産生腺腫などがあります。一方、非機能性腺腫は、早期には症状を出さず、腫瘍が大きくなり、下垂体の上方にある眼の神経、視神経(視交差)を圧迫するようになると特徴的な視野障害を引き起こします。この視野障害は両耳側半盲と言われ、視野の外側(耳側)から徐々に見えにくくなります。そのため、眼科で視野検査を受けて見つかることがほとんどです。治療は手術となり、プロラクチン産生腺腫の様な特効薬はありません。
下垂体腺腫の手術は、頭を切る開頭手術と鼻からアプローチする経鼻手術があります。巨大な腫瘍の場合、開頭手術を行いますが、最近では内視鏡を使用した経鼻手術が一般的になってきています。山梨大学医学部附属病院でも内視鏡を使用した摘出術を行っており、2016年からは術中MRI撮影を行い安全確実な手術を行っています。
これらのような症状があり、気になるかたはお気軽にご相談ください。