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外反母趾(がいはんぼし)について
山梨大学医学部附属病院 整形外科 特任助教 藤巻太郎
外反母趾とは、足の親指である母趾が小指側に「く」の字に曲がってしまう状態(外反)をいいます。親指の向きが曲がってしまうことで付け根が内側に飛び出し、その部分が靴に当たって痛みを生じます。また、足の底にタコ(胼べんち胝)ができ、そこに痛みが生じたり、親指と他の指がぶつかったり重なったりすることでも痛みを生じることがあります。
外反母趾の原因は、大きく外的な要因と内的な要因に分けられます。外的な要因として最も多いのは靴と言われており、洋式の生活習慣になってきている日本でも増加しています。特に10対1の割合で女性に多いことからヒールの高いつま先の細い靴などが悪影響を与えていると考えられています。内的な要因としては、生まれつきの足の形(指の長さの違いなど)や家族発症もあることから遺伝的な素因があるともされています。また、加齢とともに肥満や筋力低下が起こり発症することもあります。
立った状態で親指が小指側を向いている場合は外反母趾を疑います。正確な診断はレントゲン撮影を行い、「く」の字になっている親指の角度(外反母趾角)が20度以上で外反母趾と診断することが多く、角度が大きくなるほど重症となります。
治療は保存治療と手術治療に分けられます。保存治療は、まず親指のつけ根がフィットしつま先はゆったりとした履物を選ぶようにし、靴の中で足が滑らないようにすること、そしてハイヒールや先が細く親指が外反するような靴を避けることなどが大事です。また、運動療法として、足の指を開くような体操(グーパー体操)や手を使って親指を矯正する方向へ動かす運動、そしてゴムひもを使って親指を開く体操(Hohmann体操)などがあります。装具療法として、足の土踏まずや横アーチを高くしたインソール(足底挿版)や外反母趾の矯正装具を用います。保存治療を行っても効果が十分でない場合に手術治療を行います。手術治療は変形を矯正することには最も効果が期待できます。外反母趾の手術は多数ありますが、最も一般的なものは中足骨(「く」の字に曲がっている場所よりも踵に近い骨)を骨切りして矯正する方法で、変形の進行の程度により方法を選んで行います。
親指が「く」の字に曲がっていたり、親指に痛みが出現し、日常生活に支障を来たすような場合には整形外科受診をお勧めします。