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知っておこう!おくすりアレルギー やくしん
山梨大学医学部附属病院 皮膚科 助教 木下真直
多くのかたが毎日のように薬を飲んでいます。病院では日々たくさんの薬が処方され、入院すれば多くの患者さんは点滴治療を受けます。薬にはさまざまな副作用がありますが、どの薬剤にも共通して、薬アレルギーやくしん(薬疹)を起こす場合があります。
やくしん(薬疹)は数日で全身に赤い発疹が出るのが特徴です。やくしん(薬疹)を疑ったら、できるだけ早いうちに皮膚科に相談してください。多くの場合、原因となるお薬を的確に中止することで改善していきます。しかし、一度お薬アレルギーを発症すると、永久的にその薬は使えない体質に変わってしまいます(免疫)ので、今後医療を受ける上で注意が必要になってきます。
言うまでもありませんが、患者さんご自身の判断だけで「この薬は合わない」と決めることはお勧めできません。
皮膚科医は、患者さんがどのお薬をどの期間に飲んでいたかを調べ、皮膚の状態を詳細に観察し、必要に応じて血液検査や薬アレルギー検査を行うことで、的確にやくしん(薬疹)か否かを診断してくれます。どの薬が原因なのかもはっきりさせることができます。患者さん自身はやくしん(薬疹)と思っていても、実は「お薬が関係のない」じんましんだったり湿疹であったりすることも多々あります。したがって、医師の適切な診断が大事になります。
さて、薬アレルギーは一過性、軽症で済むものが多いのですが、稀にスティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症と呼ばれる重篤な薬アレルギーを発症することがあります。
投薬による治療を受けているかたは、薬の説明文書をよく読んでみてください。ほとんどの薬に、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症などと呼ばれる薬アレルギーの病名が書かれています。これらの病気は、全身の皮膚が剥け、眼・口などの粘膜が溶けることで、失明などの後遺症や、最悪の場合死亡する可能性もある非常に恐い病気です。山梨県内でも毎年数名ほどしか発症しない稀な病気ですが、どんな薬でも(市販の風邪薬でも)、誰でもこの重篤な薬アレルギーを突然発症する危険性があります。
この重篤な薬アレルギーは、軽症の薬アレルギーと一見見分けがつきにくいです。もしもお薬を飲んだ後に全身に発疹が出てきたらやくしん(薬疹)の可能性を考え、皮膚科に相談のうえ、適切な対応をとることが大事になります。