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泣き止まない赤ちゃんの話
山梨大学医学部附属病院 新生児集中治療部 特任助教 長谷部洋平
皆様こんにちは。私は普段、山梨大学小児科で診療に従事し、NICUに入院した新生児やそこを退院した乳幼児、心臓疾患を抱えた子どもたちの診療に従事しています。その中で度々「子どもがなかなか泣き止んでくれない」という相談を受けることがあります。そこで今回は、「泣き止まない赤ちゃん」についてのお話をしようと思います。
皆さんは、コリック(疝痛(せんつう)、colic)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。コリックは、原因がはっきりわからず激しく声を上げて泣くことです。特徴として、次のものが挙げられます。
- 健康な乳児にみられる1日3時間以上、週3日以上、3週間以上続く
- 生後3週間くらいからみられはじめ、2か月くらいをピークとし、生後4~5か月くらいまでには改善する
性別や人種、母乳栄養、人工栄養などによる差はないとされていて、ある統計によると、約2割程度の赤ちゃんがこれを経験するそうです。
コリックの原因は、前述したようにはっきり解明されていませんが、一説には呑気症が引き金になっているのではと考えられています。呑気とはその名の通り空気を飲むことであり、赤ちゃんが哺乳する際に液体と一緒に空気をたくさん飲む事で起こります。その予防のために授乳を縦抱きで行うことや、1回の授乳時間を10分くらいで切り上げることは解決方法のひとつになるかもしれません。
コリックの診断には様々な別の疾患の可能性を否定していく必要があります。まずは、原因のはっきりしているものを除外していくことが大切です。夜中に赤ちゃんが泣き止まないといって病院に連れて行ったら、赤ちゃんの足の指に髪の毛が絡まって指を締め付けていたといった話や、赤ちゃんの便秘に親が気付いておらず、排便させたら何事もなかったかのように元気になったという話を聞くことがあります。もちろん、何らかの病気が存在している可能性もゼロではありません。
ちなみに、赤ちゃんはだいたい1日のうち1~2時間程度泣くと言います。1歳近くまでは1日15~20時間前後睡眠することを考えると、起きている間は随分長い時間泣いていることになります。何時間以上泣いているから病気だということはありませんが、まずはいつもと違うところがないかよく観察してみてください。
しかし、長時間泣き止まない赤ちゃんに接することは、保護者にとっては大きな心身の負担になります。気の持ちようとしては、原因がわからず長く泣いている赤ちゃんはコリックの可能性があり、それはいつか止むのだと少し前向きに捉えてもらえればよいかと思います。同時に身近な人にも相談し、どうしても困った、いつもと様子が違うとなったら、小児科の先生に相談してみてください。