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鉄欠乏性貧血のおはなし

ページID:0001961 更新日:2023年11月27日更新 印刷ページ表示

山梨大学医学部附属病院 血液・腫瘍内科 准教授 田中勝

一口に貧血といっても、実はいろいろな貧血があります。今回は、貧血の中で最も多い「鉄欠乏性貧血」のお話をしたいと思います。
鉄欠乏性貧血は、その名のとおり体の中の鉄分が不足して起こる貧血のことです。「レバーには鉄分が多く含まれているから、レバーを食べると貧血になりにくい」という話を聞いたことがある方は多いと思います。このタイプの貧血のことです。
そもそも貧血とは、赤血球という血液中の細胞が正常よりも減少した状態のことをいいます。赤血球は体の中のいろいろな組織に酸素を運ぶことが最も大事な仕事です。もう少し詳しくいうと、酸素は赤血球の中にあるヘモグロビンという蛋白によって運ばれます。このため血液検査で貧血と診断されたということは、ヘモグロビンの数値が正常よりも少ないということを意味します。ヘモグロビンを作るときには鉄が必要です。つまり、鉄欠乏性貧血は、鉄が不足することでヘモグロビンを作ることができなくなった状態なのです。
貧血になると顔色が悪くなったり、集中力がなくなったり、階段を上ったときなどに動悸や息切れの症状が起こります。貧血の症状はめまいだと思っている方が多いですが、前述の症状の方が実は多いのです。貧血の症状は特に貧血になるスピードに左右されるので、ヘモグロビンの値が低くても、ゆっくり進行した場合は症状が自覚されにくいのです。
鉄が不足する原因は年齢により異なります。成人では主に出血が原因となります。男性なら消化管出血、女性なら月経などの婦人科的な出血が多く、妊娠、出産、授乳なども原因となります。
鉄欠乏性貧血は鉄剤により比較的簡単に改善します。いったん発症したら、食事療法のみでは不十分です。鉄剤は原則として内服薬を使います。約2カ月間内服するとヘモグロビンは正常値となりますが、その後更に2~4か月、場合によってはそれ以上、治療を続けないといけないということをよく覚えておいて下さい。この約束を破ると、またすぐに貧血になりますので注意が必要です。

最後に最も大事なことをお話しします。鉄欠乏性貧血といわれたら、その原因が何であるかを突きとめないと、後々大変なことになる可能性があります。鉄剤を内服すれば貧血は改善するので、治療はもう終わりと考える方が多いようです。しかし、鉄欠乏性貧血の原因として悪性腫瘍が潜んでいる可能性もあるため、原因に対する検査をしっかりと受けることが極めて大切です。よく覚えておいて下さいね。


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