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日本列島熱波襲来対策のススメ
山梨大学医学部附属病院 救急集中治療医学講座 講師 後藤 順子
新緑がまぶしい季節がやってきました。これから夏に向けて気温が上昇するため、熱中症のリスクが高まります。本格的な夏が来る前に熱中症についておさらいし、暑い夏を乗り切りましょう。
どのような人が熱中症にかかりやすいか?
熱中症にかかりやすい人は、1.子ども、2.高齢者、3.持病がある人です。
子ども
特に乳幼児は未発達なため大人に比べて上手に体温調節を行うことができず、また、体の大きさに比べ体表面積が大きいため、気温変化の影響を受けやすいと言えます。子どもを車内に放置し死亡させてしまった、という痛ましいニュースを目にしたことはありませんか?暑い日の車内温度はあっという間に上昇し、50℃を超える場合もあります。ですから、短時間のお買い物であっても、車内に子どもを放置することは絶対にやめましょう。
高齢者
高齢者は若者に比べ体温調節機能が衰えています。気温が上昇しても「暑い」と感じにくくなってしまっているのです。また、高齢者は汗をかきにくいため、たとえ体が「暑い」と感じても、上手に体温を下げられません。さらに、高齢者は若者より「のどが渇いた」と感じるセンサーが鈍くなっていて、自発的に水分補給を行わない方を多く見かけます。もともと高齢者は若者に比べ体内の水分量が少ないことも相まって、容易に脱水を来してしまうのです。できるだけクーラー等を使用し高温多湿を避け、こまめに水分補給をしましょう。
持病がある人
病気や薬の影響により体の代謝機能が低下し、高齢者と同じように暑さに対する体の調節ができなくなっている場合があります。例えば高血圧、糖尿病、あるいは精神疾患の薬を内服している人などは特に注意が必要です。
元気な若者は熱中症にかかりにくいのか?
もちろん子どもや高齢者、あるいは持病がある人に比べると、元気な若者は熱中症にかかりにくいといえます。しかし、決して慢心してはいけません。熱中症はいわゆる「環境障害」です。つまり、環境が過酷であれば誰でも熱中症にかかるリスクがあるのです。例えば、真夏の炎天下でのスポーツ、工事現場や室内での溶接作業などを長時間行った結果、健康な若年男性が熱中症で救急搬送されてくるケースが散見されます。繰り返しになりますが、健康な方であっても高温多湿を避け、こまめに水分補給をしましょう。たくさん汗をかくと塩分も失われます。スポーツドリンクや梅干しなどを摂取するのもおすすめです。
最後に、救急車で搬送される患者さんはよく「水は飲んでいたんですけれど…」とおっしゃいます。対策として一番大切なのは「休む」ことです。いくら水分補給をしても熱中症は発症します。暑い場所には行かず、行ったとしてもすぐに休憩してください。