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女性特有の悩み、些細なことでも産婦人科で相談を!
山梨大学医学部附属病院 産婦人科 平井 聡美
女性の皆さんは、女性であることを理由に、今まで「何か」を諦めてきませんでしたか。
例えば「旅行なのに生理がぶつかって温泉に入れなかった」「大事な試合中、経血漏れが気になって集中できなかった」などです。
私自身も、試験に集中できなくても我慢するものだと思って過ごしてきました。私にとっての「何か」は、旅行や受験など10~20代の自分が連想されます。皆さんにとって「何か」は何でしょうか。
女性は、エストロゲンという女性ホルモンの波にずっと揺られながら過ごしています。一生の中では、エストロゲンの上昇により初経が起き、低下すると閉経となり、月経が起きている性成熟期では毎月という単位でエストロゲンは変動しています。もちろんそれは正常な変動なのですが、月経があることにより月経前に気持ちが落ち着かない、いわゆるPMSや、腹痛などの症状により日常生活に支障がでる月経困難症などの症状に悩まされているのです。多産であった昔の女性は一生に経験する月経は約50回と言われていますが、現在の女性は初経も早くお産をしない方も多いので、450~500回ほど月経があるとされています。現代を生きる女性も十分にすごいのです。しかし、エストロゲンは悪者というわけではなくて、子宮内膜への作用や骨量の増加などにも関与しているとても大切なホルモンでもあります。医療の力でコントロールすることで、快適に過ごせるように手助けすることは可能です。
ありがたいことに、女性アスリートの皆さんに外来にお越しいただくことが増えたのですが、アスリートにももちろん月経はあります。月経の悩みのせいでベストを出せない、どうにかしたい、と思っていても指導者に相談できずに困っている方もたくさんいらっしゃると思います。また、アスリートが陥りやすい症状として、無月経もあります。運動量が多く消費エネルギーに摂取エネルギーが追いついていないといった場合に、脳が指令を出して月経を止めてしまうのです。前述したエストロゲンが低下してしまうため、骨粗鬆症などに繋がることがあります。さらに、筋力の低下、免疫力の低下などにも関与するといわれており、頑張っているはずなのにパフォーマンスが下がるといった悲しい結果になってしまうこともあります。
月経があることによる諸症状、月経がないことによる諸症状、どちらも女性にとって生活の質を下げてしまうとても重要な問題です。アスリートの皆さんのみならず、悩んでいる多くの女性の力になれたら幸いです。
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