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その足の痛み、年のせいだけじゃないかも? ~忍び寄る血管の病気「下肢閉塞性動脈硬化症」~
山梨大学医学部附属病院 循環器内科 助教 堀越健生
現在、何らかの足の症状で悩んでいる方は65歳以上で3人に1人、80歳以上では2人に1人とも言われています。「少し歩くと足が痛くなる…」「坂道や階段がつらい…」。そんな足の痛みを、「もう年だから」と諦めていませんか?実はその症状、足の血管が詰まり始めているサイン、「下肢閉塞性動脈硬化症(かしへいそくせいどうみゃくこうかしょう)」かもしれません。
どんな病気なの?
下肢閉塞性動脈硬化症とは、足の動脈が動脈硬化によって硬く、狭くなることで血液の流れが悪くなる病気です。血液が十分に届かなくなるため、歩行時に足の筋肉が痛みを感じたり、重症化すると皮膚に潰瘍ができてしまったりすることもあります。実はこの病気、決して珍しいものではありません。日本国内の推定患者数は50万人から100万人ともいわれ、ほとんどの人は無症状であることが知られています。下肢閉塞性動脈硬化症は心筋梗塞や脳梗塞との強い関連が知られており、下肢閉塞性動脈硬化症の6割に心臓または脳の血管の動脈硬化を合併していることが知られています。
「神経痛」との違いは?セルフチェックしてみよう!
足の痛みは、神経の病気(腰部脊柱管狭窄症)が原因でも起こります。しかし、血管が原因の痛みには特徴があります。下のリストでチェックしてみましょう。
● 主に「ふくらはぎ」が痛む。
● 歩いたり、坂道を登ったりと、足の筋肉を使った時に痛む。
● 立ち止まって休むと、数分で痛みが和らぐ(姿勢を変えても痛みは変わらない)。
● 足の脈が弱く感じる、または触れにくい。
● 足が冷たく感じたり、色が白っぽくなったりしている。
「神経の痛みだと思っていたら、実は血管の問題だった」というケースも少なくありません。実は歩行時に足の痛みが出る方の25%は下肢閉塞性動脈硬化症が原因であると言われています。
病気のリスクを高める要因は?
この病気のリスクを高めるのは、年齢、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病などです。特に喫煙は、下肢閉塞性動脈硬化症と非常に強い関連があることがわかっており、患者さんの約半数が喫煙者というデータもあります。禁煙によって直後から下肢痛の改善が得られたり、歩行距離の改善することが報告されています。さらに禁煙を20年以上続けると、吸わない人と同じくらいまでリスクを下げることができます。
気になったら、まずは相談を!
足の痛みは、体からの重要なSOSサインです。自己判断せずに、まずはかかりつけ医に相談するか、循環器内科を受診しましょう。早期発見・早期治療が、いつまでも自分の足で元気に歩き続けるための大切な一歩になります。
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