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「夜中にふと目を覚ますと、息が苦しい。」

ページID:0008923 更新日:2025年10月1日更新 印刷ページ表示

山梨大学医学部附属病院
呼吸器内科 臨床助教 星野 佑貴

 胸の奥が重く、何かに締め付けられるような感覚。空気を吸いたいのに、思うように吸えない——そんな経験をされたことがある方もいるかもしれません。これは、気管支喘息の発作の一つの例です。

 喘息は、気道(空気の通り道)に慢性的な炎症が起こることで、咳や息苦しさ、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという音)などの症状を繰り返す病気です。子どもに多い病気というイメージがありますが、大人になってから発症するケースも少なくなく、全年齢で注意が必要です。

 実は、1995 年に亡くなった歌手のテレサ・テンさんも、重い喘息発作が原因で命を落としたひとりです。彼女はアジア各国で人気を誇り、優しい歌声で多くの人々を魅了しました。しかし、慢性的な喘息を抱え、発作に苦しんでいたことはあまり知られていません。テレサさんは旅行先のタイで突然重い発作に見舞われ、帰らぬ人となってしまいました。彼女の死は、「喘息は命に関わることもある」という現実を、私たちに強く突きつける出来事でした。

 ここ山梨県でも、気管支喘息でお悩みの方は少なくありません。特に春先や秋口、空気が乾燥する季節や気温差が大きい時期に悪化しやすく、夜間や早朝に症状が強くなる方もいます。また、最近ではアレルギー性鼻炎(花粉症やハウスダストによるくしゃみ・鼻水・鼻づまり)を合併する患者さんも増えています。

アレルギー性鼻炎と喘息は「上気道」と「下気道」の違いはあれど、同じアレルギー体質が関係しており、実際に両者を併せ持つ人は珍しくありません。例えば、スギ花粉の季節に鼻の症状が悪化すると同時に、咳や喘鳴も出てくる——そんなケースはよく見られます。

 治療としては、まず発作を予防することが大切です。吸入ステロイド薬を中心としたコントローラー薬を毎日きちんと使うことで、気道の炎症を抑えることができます。発作が出たときのために、気管支拡張薬などの「レスキュー薬」を常備しておくことも重要です。加えて、アレルギーが原因とわかっている場合は、アレルゲンの除去や回避も効果的です。

 さらに近年注目されているのが、舌下免疫療法です。これは、アレルギーの原因物質(スギ花粉やダニなど)を少量ずつ舌の下から体内に取り入れることで、体を慣らし、アレルギー反応そのものを和らげていく治療法です。特に、アレルギー性鼻炎の方にとっては、長期的に症状を軽減させる可能性のある選択肢ですし、間接的に喘息症状の改善にもつながることがあります。

 喘息というと、「子どもの病気」「少し苦しいくらい」と軽く捉えてしまう方もいますが、重い発作は命に関わることもあります。実際、発作時の苦しさは、経験したことのない方には想像を超えるものです。吸っても吸っても空気が足りない。そんな恐怖の中で息をすることを、想像してみてください。

 テレサ・テンさんのように、芸術的な才能に恵まれながらも、喘息の発作に命を奪われてしまった方がいる——これは決して遠い世界の話ではありません。日頃の症状を軽く見ず、早めに医療機関での相談や検査を受けることが、将来の重症化を防ぐ第一歩です。

 もし「最近、咳が続いている」「夜中や朝方に苦しくなる」「花粉症もあるけど、春になると息も苦しい」といった自覚がある方は、ぜひ一度、呼吸器内科やアレルギー科にご相談ください。今の医療には、あなたの呼吸を守るための選択肢がたくさん用意されています。

 深呼吸ができる日常は、当たり前のようでいて、決して当たり前ではありません。自分の息を大切にし、健やかな毎日を過ごしていきましょう。

企画 一般社団法人 里仁会(TEL:055-273-5475)


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