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大人の発達障害 ─「生きづらさ」の背景
山梨大学精神神経医学講座助教 内沼 虹衣菜
近年、「大人の発達障害」という言葉を耳にする機会が増えました。発達障害は子どもの頃に診断される、というイメージを持つ方も多いですが、大人になってから初めて気づくケースが少なくありません。就職や人間関係の複雑化がある中で「なんとなく生きづらい」と自ら受診する方が増えています。
発達障害には主に、注意欠如・多動症(ADHD)と自閉スペクトラム症(ASD)が含まれます。ADHDでは「ケアレスミスが多い」「片づけが苦手」「締め切りに追われやすい」といった特徴が、ASDでは「空気を読めない」「急な予定変更が苦手」「人との距離感がつかみにくい」といった傾向が目立ちます。こうした特性は、神経的な基盤に基づくと想定されており、少なくとも一部には治療反応性が望めます。
子どもの頃は、周囲のサポートによって困りごとが目立たず、本人も気づかないまま大人になることがあります。しかし、大学進学、就職、結婚、育児など、生活の負荷が増える時期に「今までのやり方ではうまくいかない」と感じ、初めて発達特性が表面化することがあります。精神科外来では、うつ病や不安障害をきっかけに受診し、詳しく話を聞く中で発達障害が背景にあるとわかるケースも珍しくありません。大人の発達障害は、単に診断することが目的ではありません。自分の特性を理解し、対処法を見つけるためのスタートラインと考え、これまでの生きづらさの一因を理解できるようになる方も多くいます。
治療や支援は、薬物療法だけではなく、むしろ生活の工夫、環境調整、周囲の理解を得ることが大きな力になります。例えば、ADHDの方には「タスクを細かく分ける」「視覚的に見える形で予定を管理する」などの方法が役立ちます。ASDの方には「曖昧な指示を避け、具体的な手順を示す」「静かな環境で作業する」などの配慮が効果的です。これらは本人だけでなく、職場や家族とも共有することで、お互いの日常のストレスが大きく減ります。
大切なのは、発達特性は弱点と同時に強みにもなりうるということです。興味のあることへの集中力、独創的な発想、正確さや誠実さなど、特性を活かして活躍する人は多くいます。
自分にも当てはまるかもしれないと感じる方、生きづらさを感じる方、当科をはじめ精神科にまずは相談してみてください。
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